VOL.12 寵愛“丹波布”

此処の産地ほど商品化に苦労した所は無い。
あんまりお金の話はしたくないけど、丹波布は高価であるが故になかなか商品化が難しい。
小さくすれば生地代は抑えられるが、良くあるような端切れを使った小物づくりはしたくなかった。
僕の丹波布を知る旅は、産地訪問以外に美術館や民藝館を巡る事から始まった。
兎に角、古い丹波布を観る、触る機会があれば触れる。丹波布を肌で感じたかった。
畑を耕し、種を撒く、やがて芽を出し、花が咲き、綿を収穫する。その綿を丁寧に紡ぐ。
野山にある自然の材料で染色された糸をゆっくりと手織していく。
かつて丹波布の産地「青垣」では、養蚕が盛んで繭を出荷していた。 その中で出荷できないB級品の繭を糸にしたものが“つまみ糸”。繭から糸をつまみ出す事から“つまみ糸”と呼ばれ、織る時に緯糸に“つまみ糸”を織り込む、これが丹波布の最大の特徴となっている。
自然の素材と物を大切にする心、古い丹波布に触れていると昔の生活が脳裏に浮かんでくる。
織上がった丹波布を切って小物にするのは、その心を踏み躙っている気がしてね。
しっかりと織上がった一枚の布をシンプルに商品にしたかった。だから、僕はストールを織ってもらった。
昔ながらの縞模様を再現し、少しだけ僕のアイデアを入れて、ざっくりと織ってもらった。
その心を受け継ぐ人達、“あおがき丹波布工房”の人達に織ってもらった。
産地の方々との触れ合いは<COMEPASS_じばさんぽ。▲>でも連載しています。