VOL.10 岐路 “播州織”

漠然と西脇市方面に行けば生地が買えると思っていた僕は甘かった。ファッション畑の僕が兵庫県の地場産業に携わるようになり、先ず手っ取り早く取り組めるやろうと手に取ったのが、西脇市を中心に生産されている先染め織物の播州織。
西脇に行って播州織の生地買って、シャツを作れば売れるんちゃうって安易に思っていたけど、何処に生地売ってるかも分からんし、縫製工場もない。どっから手を付けたらエエねんと考えている時に出会ったのが、西脇市で播州織の商品を扱う小さなお店“青い鳥”のおじいさんと、商工会議所の会頭も歴任される産元(地元商社)の会頭さん。
こん時もファッション協会のサカイのおっちゃんにはホンマに世話になったわ!
おじいさんは古い織機を使って生地を織ったりストールを作ったり、会頭は色々な所に顔も利くし、播州織の事は勿論良く知っていたので、播州織とは何ぞやを教えてもらった。産地には月2,3回足を運んで、両極端なお二人にはホントにお世話になった。ただ知れば知るほど播州織でのモノづくりは難しい。
先ず圧し掛かってくる問題は、生地を生産するにあたってのロット。小ロットといえども数百メートルを織らなければならない、しかも一色で...「経糸が機械に掛かっとるから横糸変えたら違う色のチェック織れるで」って、言われてもテキスタイルの勉強してない僕はちんぷんかんぷん。
それでもここ8年近く西脇と神戸を行ったり来たりしてるうちに、播州織の機屋で最年少の若い子にも出会い、生地も織れるようになったし、播州織を沢山ストックしている会社にも辿り着き、生地の加工も出来る様になった。
最初はどこの馬の骨か分からん扱いを受けとった僕やけど、産地の方々にだんだん信頼を得る様になって“播州織コレクション”のプロデューサーにも任命してもらった。こん時はホンマに嬉しかった!
今では洋服は勿論、扇子 / 傘 / 鞄 / 手ぬぐい / 財布や小物類等は何でも作れるようになり、色々なことが出来るようになってきた。
そして、僕の動きと並行して、ここ数年で播州織の認知も凄く上がったと思う。産地に住み込んでブランドを始める若い人たちも増え始めている。トレンドがそうやからメディアも取り上げるし、しゃーないねんけど、僕には、流行りだけで移住してちょこちょこモノ作って、それで満足してる様にしか見えへんねんなぁ。僕なんかより前に西脇に入り込んで、めちゃめちゃ頑張ってる有名な女性数名は別としてね。
実際、播州織の認知度が上がって生地の生産数が増えたかというと、逆で減っている。
これが現実...
僕の力では何とも及ばん事だらけやけど、
これからも播州織の産地には、よう住まんけど通い続けようと思う。
産地の方々との触れ合いは<COMEPASS_じばさんぽ。▲>でも連載しています。